• 月. 11月 18th, 2024

Columns on Hospitality & Talent Growth

ホテルコンサルティングのリロアズHTアソシエイツ

サービスオペレーションが改善されない理由

先日、ホテルマネジメントやコンサルタント業に携わる方々を対象としたビジネススクールを運営している知人から、
ホスピタリティの観点でアドバイスが欲しいという相談を受けました。

 

その相談内容は、次のようなものでした。
『これまで多くのホテルが、様々なコンサルタントを通じてサービスの向上に取り組んできましたが、長い時間をかけても、ある程度の改善や一定水準にしか引き上げられないケースがほとんどです。それはなぜでしょうか?』
 
実は、このような相談は珍しいものではなく、他のホテル関係者からも
「コンサルタントを雇っても何も変わらない」
という話を以前から耳にしています。
 
多くのホテルが、サービス改善のために専門のコンサルタントからアドバイスを受けています。
しかし、冒頭の相談にもあるように、コンサルティングによってサービスが一定レベルにしか達せず、そこで頭打ちになってしまうケースが多いようです。
 
ビジネススクールの方もこの問題を喫緊の課題と捉え、コンサルタント向けの教育をどう進めるべきかを真剣に考えています。
今回、私に依頼されたのは、私が専門とするホスピタリティ分野からの視点でのアドバイスです。

このブログでは、実際にご相談者にお伝えした内容を、そのまま書き記していきたいと思います。
 

 

本来、プロとしてサービスレベルを十分な水準にまで引き上げるべきコンサルタントが、なぜその使命を果たせないのか?

 

この問いにはいくつかの要因が関係していると私は考えています。
特に、こうした問題を抱えるコンサルタントに共通するポイントとして、以下の重要な要素が挙げられます。
 

➀ニーズに特化したコンサルティング会社と契約していない
➁コンサルタントの資質が十分でない
➂ホテルマネジメントサイドに適切に反映できていない

 

まず、最初のポイントである

  ➀ニーズに特化したコンサルタントとの契約になっていない

 
という点についてお話いたします。
 
ご存知の通り、ホテルコンサルティングと一口に言っても、そのテーマは多岐にわたります。
 
実際、コンサルティングには、経営戦略、ウェブ集客、売上・レベニューマネジメントなどのファイナンス分野、接客マナー・ホスピタリティの向上など、さまざまなテーマが含まれます。
 
しかしながら、
しかし、これまでに「コンサルティングを受けたが、サービスが十分に向上しなかった」と相談されるホテルの多くは、

これら多岐にわたるテーマを一括でサポートする包括的なコンサルティング会社と契約しているケースが目立ちます。
 
一方で、独自の強みを持ち、特定の領域に特化したコンサルタントに依頼しているホテルは、
改善すべきウィークポイントを正確に見極め、成果に結びつけているように見受けられます。
 
これは包括的なサポートを提供するコンサルティング会社が「良くない」というわけではなく、もしサービスの改善・向上に焦点を当てたいのであれば、その分野に特化したコンサルタントやコンサルティング会社に依頼を検討するべきでしょう。
 
 

次に

  ➁コンサルタントの資質は十分か

 
という点についてお話しします。
これについては厳しい表現になりますが、私が過去に相談を受けた際、率直にお伝えした内容をそのまま書きたいと思います。
 
以前も述べた通り、ニーズに特化したコンサルタントとの契約でサービス改善を目指すべきですが、
その際に重要なのはコンサルタントの『資質』です。
 
特に私が重視するポイントとしては、次の2点です。
(A) ホテルでのスタッフ育成や教育機関での指導経験があるか
(B) サービスパーソンとしてのどれだけの経歴を持っているか

 
この2点は、サービス向上のためのコンサルタント選びの際に不可欠な要素です。
サービスに特化した内容でサポートを必要としている場合、
コンサルタントの選定基準として
当然ながら、その経歴をしっかりと精査されることでしょう。

 
まず、
(A)のコンサルタント自身のスタッフ育成に携わったりや教育機関での指導経験という点については、
特に説明するまでもなく、当然、コンサルタントとして必要な経歴ですので詳細を書かずともご承知のことと思いますので、割愛させていただきます。
(指導経験のない方のコンサルタントはさすがにあり得ないことですので)

では、
(B)のサービスパーソンとしてどれだけの経歴があるのかについてです。
コンサルタントを探される際、非常に素晴らしい経歴がずらりと並んでいるのをご覧になられたことがあると思います。
 
そこには、これまでの「ホテル経験や数多くのVIP接客経験」などが多く並んでいたのではないでしょうか。

しかし、それだけが重要なわけではありません。
というのも、そのような肩書きだけが大きく意味を持つわけではないからです。
 
私が在籍していたリッツカールトンでも、セントレジスでも、
(例えばベルスタッフを例にとってみましょう)

高級ホテルという場所においては、特に一番優れたサービスをするスタッフだけがVIPを接客担当するわけでなく、
長年の経験者であろうが、新人スタッフであろうが、またそれがアルバイトスタッフであろうが、どのスタッフでも何十回と接客するシーンがあるからです。
端的にいえば、入社後ほどなく経たない役職のない若手スタッフでも、十分にVIPの接客をするチャンスが頻繁に訪れるのです。
ともすると、勿論「VIP接客経験」を職務経歴書に書いても、そこに嘘はないのです。
 
高級ホテルには毎日、当然のように東証一部の会長や社長、役員の方たちのご来館があります。
半年未満の経験値でも、ある程度接客レベルに問題がないと認められた時点で、ハリウッドの有名俳優であろうが、世界的なミュージシャン、とある国の要人をも、シフト上で接客にまわさないといけない可能性や状況が出てくるのです。
 
それはどうでしょうか。
顔を合わせ、荷物を持ち、部屋まで案内しても接客経験に変わりはありません。そして、これは接客といっても、ただ接客しただけ(会っただけ)の経験にすぎないのです。
それでもコンサルタントの「肩書き」というものになりえるのです。

 

しかし、サービス力を高めたいのであれば、
お越しいただいた誰を接客したのか(会っただけ)ではないのです。
どれだけの顧客を『自分のお客様』として捕まえ、またお越しいただけるようにさせることができたのかが重要なのです。
 
もし私がコンサルティングのための会社を探すならば、
そのコンサルティング担当者に

➊サービスクオリティが高いといわれるホテルで、
➋そこで『サービスパーソンとして』でトップとなった経験があるか
➌もしくは、どれだけの顧客を自分の顧客として捕まえたか

など、そういったことを具体的な例を示していただき、確認します。
それがコンサルタントの選定基準にしなければならないのではないでしょうか。
 
要するに、
重要なのは、「顧客のステータス」よりも、「顧客との関係性」がどれだけあったかです。
なぜなら、ホテルがコンサルタントに求める資質とは、
お客様が何度も利用したくなるホテルづくりをすることなのですから。
 
ホテルスタッフでも、顧客満足度の高いサービスを提供している人たちには
「自分についている顧客」がいます。
もちろんそのホテルブランドが好きで来ている顧客もいますが、
サービススタッフが好きで利用してくれている(自分の)顧客がいるかです。
 
昔のパリのレストランでは、総料理長(料理)が変わるより、
ギャルソン(サービス)が変わる方がそのレストランの常連客への影響が大きかったとも言われるほどです。
 
私の場合を例にとりますと、ザ・リッツ・カールトン大阪に在籍していた頃、ありがたくもセントレジスホテルから引き抜きをいただきました。
その際、それまでリッツでご贔屓いただいた私の顧客からは、
「君がリッツ辞めちゃうんだったら、次から俺の定宿はセントレジスだな」と仰っていただき、
多くの方がこれまで利用していたホテルから、私の新しい職場(セントレジス)のほうに定宿を乗り換え、足しげく通ってくれるようになりました。
(ホテルからすると、このようなスタッフの流出を防がないといけませんが)
 
これはブランドのお客様というよりも、ホテルスタッフ個人に付いたお客様であることが分かります。
 
また、これまで私が色々なスタッフのサービスを見ていて感じてきたことですが、
むしろVIPの接客において、スタッフはミスをしないためにも「無難にこなす」サービスをしがちになることが多く見受けられます。
ともすると、そこからの顧客との関係性を築けるチャンスは少なくなります。
 
もちろん無難と一言で片づけてしまっては語弊があるかもしれません。
しかし、本来はそうあってはいけないのですが、先述した通り、VIP接客時のホテルスタッフの多くは、ミスを避けるために「安全牌」をとった無難なサービス方法になることがよくあります。
 
そのため、接客内容が受け身になり、丁寧さは残しているが、ただリクエストに応えるだけの目立たない「黒子」の接客を行っている人たちが多いのが事実でしょう。
ましてやそれが経験を積んでいるスタッフほど、サービスレベルが高い、低いに関係なく、難なく「こなし」てしまっている人がいかに多いかと、(残念ではありますが)そう感じる部分でもあります。
 
もう一度思い出してみてください。
そもそも外部から報酬を払ってまでコンサルタントを雇い入れようとしている目的は何だったのでしょうか。
 
「無難に(難なく)」接客を「こなす」サービスパーソンを育てることだったのでしょうか。
勿論、そうではなく顧客との関係性を築くことの出来るスタッフ育成こそが本来の目的です。
 
VIPであろうが、カップルでお越しのお客様であろうが、サービスマンたるもの、お客様から顔を覚えてもらい、好感を持っていただき、また利用したいと思っていただけるようになることが本来の仕事。そうやってお客様に慕われるサービスを提供することでヘビーユーザーにつながるわけなのですから、黒子のように、無難にこなしたサービスは、お客様から「便利さ」という価値を提供しただけで、強く心の記憶に残せたわけではありません。
 
だからこそ、上記でも述べたように、VIPの接客経験だけをずらりと並べたコンサルタントが必ずしも十分な資質を持っているとは言えないのです。
これからサービスを改善・向上を目指すというのであれば、私が言及するようなトップレベルでサービスパーソンとして活躍をしてきたコンサルタントを探していただきたいのです。本来の目的に立ち返り、「サービスでトップを取ったことがある」と自信を持って経歴を述べられるコンサルタントの検討をしていただきたく思います。
 
 

そして、最後に

  ➂マネジメントサイドに適切に反映が出来ていない

 
という部分について書きたいと思いますが、
その前に、
ご相談をされた方から、以下のようなご質問も同時に受けていたのでそれについても併せて書きたいと思います。
 
その方が相談時に考えられていた内容に、
「サービス力を改善できない原因の一つとして、スタッフの情報共有力やコミュニケーション力などの低下が起因しているのではないか」
というものでした。
 
もしかすると、それは要因の一つかもしれません。
しかしながら、私が思うにそういった考えは今すぐに取り払って欲しいと伝えました。
というのも、そもそもこういった発言は、
 
「サービススタッフのセンスがないから出来ないんだ」とネガティブな発言をしているのと同じで、
改善できない理由をスタッフに押し付けてしまっているにすぎないからです。
 
当然、それが根本的な解決策になるとは考えられません。
ただ出来ない理由を述べているだけにとどまっているにすぎないのです。
 
改善を目的としているのであれば、改善が出来ない理由を正当化しようとするのではなく、
もっと違う部分にサービスレベルを上げるための要素を見出す必要があります。
 
そして、教育する立場の人間やコンサルタントが理解しておかなければならないのは、
「環境さえ整えることができれば、人間はだれしもおのずと成長が出来る存在」であるということです。
 
実際にその部分に着目せず、ないがしろにしてしまっていることが多いのではないでしょうか。
残念ながら、改善に至れない多くのサービスコンサルティング企業が、それに必要な環境や要素の核心を捉えきれておらず、
ホテルマネージメント側に提示することすらできていないのです。
 
そして、変革に必要な環境はスタッフレベルよりもマネージメントレベルにまずは浸透させる必要があるのですが、こういったコンサルタントは、「契約を直接交わしているマネージメントサイドに強く言えない」ということもあり、それが障害になって言うこともあるようです。
 
そこでマネージメントに伝えきれないコンサルタントは、ボトムアップだけを試みようとするので、
結果的にチーム全体を変えられず、それよりも高みに至らせることが出来ないのです。

 

最後に

 

いかがでしたか。
なぜホテルサービスコンサルタントがいるにもかかわらず、一定レベルまで引き上げられないか。
多くのことを書きましたが、
思い当たる節があるとご賛同いただける方もいらっしゃるかとも思いますし、反対のご意見もあるでしょう。
こちらはビジネススクールの方に私から指摘させていただいた点で、その方もご納得いただけたようでした。
結果的には多くはコンサルタントの資質の部分が重要なポイントとなっていると思います。
 
もちろん、他にも指摘する点や問題点は多くあると思いますが、大きくは私が述べた部分がポイントとなっていることは間違いないでしょう。
 
セオリー通りや正攻法を論ずるだけのコンサルティングよりも、
一度、これまでのものから大きく視点を変え、違った角度からのアプローチをしてみるのも変革のカギとなるでしょう。
それは実際やってみるとそれほど難しいものではないかもしれません。
 

ホテルのサービスやクオリティコンサルタントのことでもう少し詳しく情報を得られたいと思われる場合、
ご相談いただければ可能な限りお手伝いをいたします。お気兼ねなくお問い合わせください。

 

 

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