近年、ラグジュアリー層の旅行スタイルが多様化し、目的地の選び方や旅行中に求める体験にも変化が見られます。
特に富裕層の旅行に対する期待は、ただの観光や滞在にとどまらず、食や文化、体験そのものに重点を置く傾向が強まっています。本稿では、マリオット・インターナショナルが行った最新のラグジュアリートラベル調査を基に、ラグジュアリー層の人気の旅行先やその目的について詳しく見ていきます。
ラグジュアリー旅行の最新トレンド
先日、マリオット・インターナショナルが発表した「ラグジュアリー・トラベル」という意識調査が行われました。これは富裕者層の中でも特に旅行を頻繁にする方を対象に行われた調査で、そこには非常に面白い結果が出ておりました。
(調査対象とその背景)
この調査は、アジア太平洋地域のオーストラリア、シンガポール、インド、インドネシア、韓国、日本の6か国に住む富裕層を対象に実施され、2024年4月18日から5月13日までの1,202名の旅行者からデータを収集。旅行における嗜好や傾向の分析が行われたのです。
1.旅行支出が増加傾向
調査によると、富裕旅行者の68%が今後1年間で旅行支出を増やす予定と回答しています。
特筆すべきはインドで、89%が旅行中の支出を増やす予定と結果が出ています。これは現在、経済成長が著しいインドならではの現象でしょう。
これはインド人旅行者が増えることで、世界中のラグジュアリーマーケットもインドを中心に動き出すであろうと期待されます。インド人富裕層が旅行先でどんな贅沢を楽しむのか、注目をしていきたいところです。
2.富裕層の人気の旅行先として日本が2位に
今回の調査で明らかになった人気の旅行先ランキングで1番多かったのが、全体の46%がオーストラリアを旅行先に選んでいます。続いて日本が42%、香港が27%と続きます。
日本が、リゾート地として知られるインドネシアよりも人気がある旅行先として入っているのには、日本文化や歴史だけでなく、「円安によるコストパフォーマンスの高さ」などさまざまな要因は考えられますので、2番目に選ばれたからといって、ただただ手放しで喜んでいてはいけないものかもしれません。
どういった魅力を今後、日本が海外に発信し続けられるだろうか、そして来た人にどれだけ満足してもらえるかを考えていかなければなりません。
3.富裕層の3つのペルソナ
調査では、富裕層旅行者を「ベンチャー旅行者」「エクスペリエンスの目利き」「時代を超越した冒険家」という3つのペルソナに分けられています。
「ベンチャー旅行者」は、ビジネスとレジャーを融合させた旅行者。彼らは旅先でリラックスしつつ、ビジネスチャンスを狙っている人たちのこと。ある意味、最も現代的な旅行者といえるでしょう。
「エクスペリエンスの目利き」は、主にミレニアル世代で構成され、ウェルビーイングや自己投資を重視する人々です。彼らは、自分に合った特別な体験を求めて世界中を旅しています。
最後に「時代を超越した冒険家」は、65歳以上のシニア層に多いとされていますが、目的地の深い文化や歴史に触れたいと考えている人たちです。彼らは、観光名所よりもその土地の真髄を求める探求者です。
4.旅行の目的は「食」
今回の調査で興味深いのは、富裕層旅行者の88%が「食」を旅の目的として挙げている点です。
もちろんどの層においても、その文化体験の一つに色が挙げられるのですが、特に富裕層にとっては、高級レストランでのディナーが、理想的な夜の過ごし方のようで、事実、49%がこれを選んでいます。また、食に対するこだわりから、ホテル選びにも影響しており、81%が高級レストランの有無を基準にホテルを選びが行われているようです。
まさに、美食を求めて世界を旅する贅沢が、今後ますます注目されることであるとともに、ホテルのレストランのスタイルも見直していく必要が出てくるのではないでしょうか。
というのも、せっかく日本に旅行に来た外国人観光客が、日本でイタリアンを食べたいと思うのだろうかなどです。そういった、課題が挙げられます。
5.富裕層旅行者が求めるものとは?
この調査から、富裕層旅行者がラグジュアリー・トラベルに求めるのは、食を中心とした豊かな体験であることが浮き彫りになりました。
確かにこれは私の肌感覚ではありますが、同感です。特に、高級ホテルのコンシェルジュでのご経験がある方はよくご存じとは思いますが、超富裕層の方たちは、まず絶対に行っておきたいレストランを旅行計画のメインイベントとして先に押さえておいてから、その他のアクティビティをそれに付随するように決定する傾向にあるように感じます。
たとえば、「○○というミシュランのレストランに行きたいのだが、その前後でのアクティビティを考えてくれない?」といったようなお問い合わせがあるといったように。
しかしながら、その富裕層をターゲットとしている高級ホテルは、近年、単なるリクエストに応えるだけの形だけのサービスの提供だけになってしまっています。どのように心からのおもてなしをすれば、お客様の心に響き、それがリピート顧客となるのかを率先して実践していかなければなりません。これは日本のホテルサービスの底上げにもつながっていきます。
また、日本にリピートしたいと考える富裕層が増加することにより、地元産物や文化も、富裕層ではない一般大衆の憧れとなり、観光地としての魅力を一層高めていくことにもつながります。観光消費額の増加や地域経済の発展も大幅に期待されるよう、旅行の最終目的地である日本の「ホテルの魅力」をしっかり高めていきましょう。
あとがき
ラグジュアリー層の旅行ニーズが変わりつつある今、ホテル業界はそれに応じたサービスや体験を提供することが求められています。特に食文化や体験の重要性がますます高まる中で、ホテルはどのようにして富裕層の期待に応え、さらにリピーターを増やすかが鍵となるでしょう。日本の観光地としての魅力をさらに発信し、豊かな体験を提供することで、ラグジュアリートラベラーにとっての理想的な目的地となることを目指していきたいものです。
【スポンサードリンク (Sponsored Link)】