住友商事がホテル事業に参入
住友商事が新たに高級ホテル事業に参入するとのニュースが報じられました。これまでは、同じ住友グループの住友不動産が「ヴィラフォンテーヌ」などを運営してきましたが、今回、住友商事が米国の高級ホテルブランドを誘致し、銀座で新たに展開する計画です。ホテル業界への進出は、商事系企業として新たな成長戦略の一環と見られています。
インデックス
開業予定の場所と規模
2028年に開業が予定されているのは、銀座の「コリドースクエア銀座7丁目」です。この場所に建て直しを行い、1泊の客単価が10万円から20万円という高価格帯のホテルを展開する予定です。住友商事は既にこの土地と建物を取得済みで、旧テナントのオフィスは撤去済みです。
ホテル名はまだ公表されていませんが、敷地面積は約1,200平方メートル。客室単価から考えても、一部屋当たりが広く取られるため、客室数は150室以内となるのではないかと私個人としての推測です。総投資額は約500億円と見込まれ、ターゲットは主に海外の富裕層です。
(地図)日本経済新聞電子版より
日本の高級ホテル市場の現状
近年、円安の影響もあり、訪日外国人観光客が急増しています。特に、高級ホテル市場では宿泊施設の不足が顕著です。観光庁の「宿泊旅行統計調査」によると、2023年に東京都内で宿泊した延べ宿泊者数は9730万人に達し、コロナ禍以前を上回る数字となっています。
現在、円安の影響で訪日外国人の数が急増しており、特に高級ホテル市場において宿泊施設の不足が顕著です。観光庁が2023年に発表した「宿泊旅行統計調査」によれば、東京都内のホテルや旅館に宿泊した延べ宿泊者数は9730万人で、コロナ禍前を上回っています。
また、日系ホテルであるパレスホテル東京は2023年の年間稼働率が67.2%で、コロナ禍前の前年比よりも19.5%増加したとのことです。
残念ながら、日本はまだまだ世界に比べて高級ホテルが不足しています。米旅行サイト「ファイブスターアライアンス」が紹介する日本の高級ホテルは約60カ所ですが、米国は約1300カ所、フランスに約190カ所、中国でも約170カ所と、日本はその数を大きく下回っています。
相次ぐ高級ホテル投資
こうした中で、訪日富裕層を狙った高級ホテルの開発が増加傾向にあります。住友商事は今回の銀座の開発以外にも、国内観光地や主要都市で高級ホテルを複数展開する計画を発表しています。将来的にはホテル事業全体で、純利益が数十億円規模に育つことを目指しています。
最近の動向として、ハイアットハウス東京渋谷が2024年2月に開業予定であり、フォーシーズンズホテル大阪も今夏の開業を予定しています。さらに、帝国ホテルは2026年春に京都で新規開業し、30年代には東京の本館を建て替える検討をしています。これらの動向は、日本国内での高級ホテル事業への投資機会が増加することを示唆しています。
ホテル人材の課題
近年、ホテルの数は増加していますが、高級ホテルで接客ができる人材の不足が懸念されています。コロナ禍からホテル全体の需要は回復し、自動チェックインなどを主流とする低価格帯のホテルも増加していますが、高級ブランドのホテルにおいては人材育成が遅れているのが現状です。
2000年頃から、日本のホテル市場は外資系ホテルの進出や顧客ニーズの多様化により大きな変革期を迎えています。しかし、2010年以降、上質なホスピタリティを提供できる人材育成には大きく遅れが生じていると感じます。「おもてなしの国」として知られる日本ですが、そのイメージは過去のものとして受け入れなければなりません。海外のホテルを利用する方は、この点を特に感じているのではないでしょうか。
近年も多くの高級ホテルが慎重な採用姿勢を崩していないようですが、私の考えとしては、採用の絞り込みよりも人材を多く取得し、その後の育成に重点を置く方が良いと思います。これにより、人材の確保とサービス力の向上を両立できるでしょう。
訪日外国人が日本のホテルに宿泊し「良かった」と感じることは、旅行の印象そのものを大きく変えます。私たちホテル業界に身を置く者としては、再び日本に来たくなるようなホテルづくりを進めていきたいものです。
どのホテルブランドが入るのか?
住友商事が手掛ける新ホテルのブランドはまだ公表されていませんが、どのホテルが入るのでしょうか。
私の予想では、既存の東京のホテルブランドではなく、現在アジア圏に積極的に展開をしているブランドではないかと考えています。
ニューヨークの「ザ・カーライル・ア・ローズウッド」のような、銀座にふさわしい高級ホテルが選ばれてもおかしくないかなと考えています。ローズウッドホテルは2024年に宮古島、2025年に京都にも開業予定で、日本市場にも積極的に進出しています。
さらに、他にも考えられる候補として、以下の米国高級ブランドがあります:
- SLS Hotels & Residences:現在アジアで拡大しており、モダンラグジュアリーとクリエイティブなデザインと体験を融合させています。SLSはアコー傘下ですが、ライフスタイル・ラグジュアリーにフォーカスしている点が特徴的で、銀座にとってはユニークな存在となるかもしれません。
- Six Senses Hotels & Resorts:ウェルネスと持続可能性に重点を置くことで知られるシックスセンシズは、米国に本社を置くインターコンチネンタルホテルズグループ(IHG)のひとつです。アジアで成長を続けているが、東京にはまだ進出していません。
- Montage Hotels & Resorts: 米国を拠点とするモンタージュは、オーダーメイドの体験と卓越したサービスに焦点を当てた超高級ブランドです。まだ日本には進出しておらず、東京のラグジュアリー市場への進出を検討している可能性も考えられます。特に銀座は日本進出の理想的な場所といえるかもしれません。
- Pendry Hotels & Resorts:モンタージュ・インターナショナルの子会社であるペンドリーは、ラグジュアリーとライフスタイルの融合を提供し、銀座のような都会的で高級な市場にとって魅力的かもしれません。ペンドリーは近年、急速に拡大しており、国際成長戦略の一環として日本を検討する可能性もあります
これらのブランドは、すでに日本国内やアジアで人気を博しており、海外からの富裕層観光客に高い評価を得ています。住友商事の新しいホテルがどのブランドを採用するかは、2028年の開業に向けて大きな注目ポイントとなるでしょう。
まとめ
住友商事が銀座で手掛ける新しい高級ホテルプロジェクトは、日本のホテル業界における大きな進展です。特に訪日外国人観光客、特に富裕層をターゲットとした市場の成長が見込まれる中、このプロジェクトは注目されています。日本国内の高級ホテル市場は依然として成長途上にあり、住友商事の参入がさらなる市場の活性化を促すでしょう。
また、サービス業界における人材不足の課題を克服し、ホテルの質を高めるためには、従業員の育成と継続的な研修が鍵となります。2028年に向けてどのブランドが採用されるのか、そしてその成功がどのように日本の高級ホテル業界全体に影響を与えるのか、今後の動向に注目していきたいところです。
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